大学院入試(文理融合、文系学際、理系学際)

かつては、文学研究科、法学研究科、経済学研究科、理工学研究科といった名前と内容がすくにわかる大学院だらけでしたが、近年では、京都大学大学院人間・環境学研究科、京都大学大学院地球環境学堂のような珍しい名前の大学院が増えました。そのため、自分に合った大学院を見逃してしまっているケースが続出しています。
 ちなみに、京都大学大学院人間・環境学研究科の「環境」と、京都大学大学院地球環境学堂の「環境」は、意味が全然違います。地球環境学堂では、いわゆる環境問題、ECOを文系と理系の多様な学問の視点から学問の垣根を超えて研究する大学院で、人間・環境学研究科は、環境問題研究のための大学院ではなく、人間を取り巻くあらゆることを研究する大学院で、文系から理系まで広くあります。文学、哲学、歴史学社会学文化人類学、地理学、法学、政治学、経済学などから、物理学、化学、生物学、情報化学、医療系、心理学などほんとうに幅広い分野を学べる大学院です。

では、「どんな人が受験しているか?」と言いますと、大まかに、次のように分類できます。

・学際的なアプローチで研究したい人
・文理融合がいい人
・幅広い知識と広い視野の人材になりたい人
・指導教授になって欲しい先生の所属がそこだから
・環境科学、情報科学などをやりたい理系出身者
・いずれ医学部学士編入を受けるための準備
・ゴリゴリの理系だと困る理系出身者
・入試形式で筆記の負担が少ないため
・就職活動の学歴フィルター対策
・文系だけど理系っぽい学歴になりたい人
・大学受験のリベンジ
・文学、哲学、地学などからもう少し企業の印象がいい専攻に変わりたい人

 1991年以来の文部科学省の大学院拡充政策によって多様な大学院が増えており、学部よりも大学院研究科が増えています。そのため、名前が似ていたり、不思議な名前の大学院が増えているため、せっかくの学びのチャンスがあまり知られないままになっている側面があります。
 一橋大学大学院には、社会学研究科と言語社会研究がありますが、社会学研究科の中に文学、言語学歴史学、哲学、政治学、国際関係論、経済学、地理学、心理学、精神医学、天文学、環境科学などを学べるようになっていますが、言語社会研究科には、言語学、文学、歴史学、哲学、歴史学などこれまた多様な学びができるようになっています。しかし、社会学研究科、言語社会研究科を一橋のHPで見る人は、両方をしっかりと見ることはあまりないでしょう。

 早稲田大学の理工学術院の学部には、基幹理工学部先進理工学部創造理工学部の3つありますが、早稲田大学の理工学術院の大学院には、基幹理工学研究科、先進理工学研究科、創造理工学研究科、環境・エネルギー研究科、情報生産システム研究科と5つあります。学部がない研究科を独立研究科と言いますが、独立研究科には早稲田の内部生は受験することが少ないため、外部生にはチャンスが大きくなります。また、環境・エネルギー研究科、情報生産システム研究科は、文系の人も受験しやすくなっています。早稲田理工だけど実質文系の人が就活をするとロジカルで頭いいと企業に評価されやすいという現実があります。
 東工大の環境・社会理工学院の社会・人間科学コースには、文学、言語学、哲学、宗教学、文化人類学社会学、心理学、日本語学、政治学、国際関係論、数学などを学べて文系でOKのところがあったり、東京医科歯科大学大学院のMMAコースは、医療政策、医療経営を学ぶところで文系でも受け入れてもらえます。
 
 慶應義塾大学大学院医学研究科の修士課程には、経営学のコースがあり、文系の人も進学しています。慶應には、政策・メディア研究科、健康マネジメント研究科、システムデザイン・マネジメント研究科、メディアデザイン研究科というカタカナの名前がかぶっている大学院があり、混同する人が続出してしまっていて分かりにくかったりします。このカタカナの大学院はすべて、文理融合の大学院です。法学研究科だけど経済学の研究室があったり、看護医療学部は大学院になると健康マネジメント研究科と名前が違ったり、文学研究科なのにICTをしっかり学べる図書館・情報学専攻があったり、文系と理系の壁がなくなっています。慶應の理工学研究科には外部生も面接だけの入試形式があるため受験しやすかったり、慶應には建築学科はないものの、理工学研究科のシステムデザイン学科で建築を学べたり、政策・メディア研究科の環境デザイン・ガバナンスプログラムで学ぶことで1級建築士受験資格を取得できたりします。なた、同じ政策・メディア研究科の先端生命科学プログラムではバイオ関係をしっかり研究できて山形県にもキャンパスがあったり、複雑化しています。

 東京大学大学院には、総合文化研究科(駒場)、情報学環・学際情報学府(本郷)、新領域創成科学研究科(千葉県柏市)のように文系と理系の両方ある研究科があったり、医学系研究科の公共健康医学専攻が文系でもOKだったり、工学系研究科の都市持続再生学コース(通称まちづくり大学院)は平日夜間と土曜日に学びで修了できる社会人大学院で文系の人も大勢進学していたり、農学部の大学院の農業生命科学研究科の農業・資源経済学専攻は文系ですし、同じ研究科の農学国際専攻は文理融合のために文系の人も受験しやすく学びやすくなっていたりします。
 そもそも、文系と理系をはっきり分けている国は世界の中ではほんとうに少数派で、日本の方が特殊です。社会が複雑化していますし、国際競争力のための大学改革のために文理融合は進んでいます。学問の垣根を取り払って広く学ぶ学際化の流れは止まりません。文系の中の学際、文理融合という学際、理系の中の学際などが進んでいます。
 1991年からの大学院改革では、文学研究科、経済学研究科、理学研究科、工学研究科以外がとても増えましたが、その細かい動向を知っている人は少ないため、学問の再編、大学院の新設、再編の動向をふまえて受験戦略を立てれば多くの選択肢があるものの、そうしたことを知らないまま受験する人が多いため、もったいないことになっています。

入試科目は、
・英語の筆記、専門科目、面接
・TOEFLやTOEIC、専門科目、面接
・TOEFLやTOEIC、小論文、面接
・TOEFLやTOEIC、面接
・小論文、面接
・面接のみ

と多様です。多様な学問分野を学びたい人が受験するため、多くの人が解きやすい共通小論文の出題だったり、筆記試験がないことも多く、定員も多いため、外部生にも合格のチャンスが大きくなっています。自分の在籍大学には文理融合がない人は、その大学院に入りたい理由を受験の面接で質問された際に答えやすいというメリットもあります。
 社会が複雑化しているため、文系と理系の両方の知識、視点を持った人材が求められています。ビックデータ、AIの時代に、理系は一切嫌だと言い出す文系の人は進路が狭まってしまいます。コロナ対策も、命を守るという医学、公衆衛生学の視点も必要ですし、雇用、景気を考える経済学の視点も不可欠ですので、コロナ対策を考えるには、文理融合の大学院が有益でしょう。

【まとめ】
・文系と理系がはっきり分かれている日本は世界の中での少数派
・学問の垣根を超えて学ぶ学際化が進んでいる
・社会が複雑化しているので文系と理系の学際化、文系の中の学際、理系の中の学際も進んでいる
・東大医学部、工学部、農学部の大学院は文系もあったり、東工大東京医科歯科大学の大学院には文系があったり、早稲田理工、慶應医学の大学院には文系もあるなど、文系と理系は、大学院の名前からは分からなくなっている
・文理融合などの動向を知らない人が多く、文理融合の学際系大学院を見落としてしまう人が多いため、定員が多めのこうした大学院は、ライバルが少なくなりがちでチャンスがある
・入試科目は多様で、各自の都合に合った大学院を併願しやすい
・文理融合などの大学院は、東大、京大、阪大、北大、東北大、名古屋大、九州大、一橋、東工大、神戸大、早稲田、慶應義塾などの上位校に多く、その他の学校にはあまりないので、自分の大学の大学院ではなく有名大学に移籍する大義名分にしやすい
・文系の人も理系のような学歴に見られために就職活動で有利になることがある

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